『ひきこもれ』
『ひきこもれ』 吉本隆明
(大和書房 ISBN4-479-39095-2 C0012)
数年前、パソ通の書き込みで「吉本隆明」という名前を目にするまで、私はこの人のことを知らなかった。戦後思想界における大きな存在ということだが、「思想」という言葉自体にも、ずっと距離のあった私。彼の著作や言動に触れることはなかった。
その後、週刊文春の記事で、彼がこの本のタイトル「ひきこもれ」と同様のテーマで語るのを読んで、興味を覚えた。
この本でも、吉本氏は、「ひきこもる」ことで育つものがあると説く。また、ひきこもる人を善意でもって引っ張り出そうとする人の危うさについても語っている。さらに、不登校やいじめ、自殺などについての話。自分のいい加減さ、考えの揺らぎも率直に出しているところが、私は好きだ。
何となく体の具合が悪いとき、だいたいそのまま数日間過ごす。すぐに医者にかかるということを、私はまずしない。何日間かソロソロと過ごしていると、いつの間にか回復している。そんなことの繰り返しで、この歳までやってきた。病院の診断で何とかと病名がつくと、その病気に本当に罹ってしまうような、そういう気がしている。それで、何となく病院を避けてしまう。それで済んできた。済ませてきた。そんなことをしてて、いずれ取り返しがつかない事態を招くことへの恐れは、もちろんあるけど。(^^;
同じようなことが、世の中のことでもあるような気がしている。例えば、「いじめ」とか、「ひきこもり」とか、それから最近出てきた「ニート」とか。その言葉がマスコミで連呼され、一般化され、一様に「解決すべきもの」となっていくことに、違和感を覚える。ほんの少し具合が悪いだけなのに、「病名」がついたために、本当に「病気」になってしまうような。
そんなことをボヤッと思っているものだから、この本の内容には、うんうんと頷くことが多かった。
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